3月末で期限切れとなった中小企業金融円滑化法。
別名、モラトリアム(返済猶予)。
リーマンショックを受け、中小企業救済策として2009年末に導入された。
その数約40万社。総額80兆円の規模になる。
「借りた金を返さなくてもいい」 この常識外れな法案は当初、
元銀行マンの僕にしては受け入れ難いものであった。
貸した金が利益を生まず塩漬けになる。
これは 融資がメイン業務となる中小の金融機関にとって致命傷だ。
不良債権を抱えた金融機関が次々と破綻する90年代の記憶はまだ新しい。
確かにリーマンショック後の日本経済は、
金融システムの崩壊に加え、基幹産業の減速が重なり
大きなカンフル剤を必要としていたのは間違いない。
しかし、モラトリアムを利用しなければやっていけない企業は、
酷なようだが、社会から求められている企業ではなく
2〜3年延命しても結果は同じ様に思える。
倒産した企業が社会から必要とされている場合、
会社更生法などによって再生が図られる。
これも経済循環の正常な一面であろう。
ボーダーラインにある企業の倒産を意図的に止めるとどうなるか?
本来ならば整理される債務がどんどん膨れ上がり、
潜在的な不良債権がどんどん大きくなり、
中小の金融機関は支えられなくなる。
円滑化法の利用企業に対する融資比率は大手行よりも
地銀・信金といったローカルバンクの方が圧倒的に多い。
もともと正常化債権の少ない中小のローカルバンクにとって
この潜在化した不良債権はとても深刻な問題となる。
これから歴史的にも類希な量的緩和政策や多様な公的支援策で
ソフトランディングに向けたインフラが整いはじめているが、
自主再建困難とされる企業の10兆円単位での隠れ不良債権が
顕在化するような事態になると、最終的には国民がツケを払う
事になりかねないのだ。
失われた20年と言われる大きな原因の一つに金融機関の
不良債権問題がある事を再認識して欲しい。
本当に久しぶりに明るい兆しが見え始めている日本経済の
足を引っ張るような事態にならないといいが・・・